先輩からの声 Vol.068

Vol.068「リューベック訪問」

文責
臼井 英晶
所属
助教
掲載日
2016年12月1日

11月にドイツ、リューベックにある University of Lubeck Institute of Biomedical Optics (BMO)にて勉強する機会を頂きましたので報告します。

この施設は、Medical Laser center Lubeck (MLL)と共同で最新のレーザー医療機器の開発を行っている施設で、その成果をZEISSやHEIDERBERGといった我々眼科医にとって馴染み深い企業に譲渡している大変先進的な研究開発施設です。安川准教授、加藤講師、私(臼井)は、この施設でリサーチグループリーダーをされている三浦央子先生に案内いただきました。

初日に、我々からは、安川准教授より、加齢黄斑変性の病態生理と網膜色素上皮細胞(RPE)スフェロイドモデルについてのプレゼンテーション、私(臼井)からはRPEシート作製のプレゼンテーションを行いました。普段と違って聴衆は物理学者が多く、分かり易く説明するよう心がけました。また慣れない英語での質疑は安川准教授にも助けて貰いなんとか終えることが出来ました。

翌日以降は、BMOおよびMLLの概要説明、開発中のレーザー機器についての説明、見学をしました。具体的には、診断機器としては高速撮影OCT(光に反応して伸縮する視細胞外節まで描出可能)や2光子励起顕微、fluorescence lifetime imaging (FLIM)等の見学をしました。これらの診断機器はこれまで不可能だった網膜の詳細を描き出すことが可能であり、網膜や疾患の生理を解明するのに役立つものでした。また、治療機器としてはAutoPhoNやSRTといったレーザー機器の見学をしました。AutoPhoNは、簡潔にいうと温度調整可能なレーザー凝固機器です。従来のレーザー機器では実際の温度測定は出来なかったため、過凝固や凝固不足といった問題が常にありました。しかし、AutoPhoNではレーザー照射対象の実際の温度測定が可能なためにより低侵襲な治療や細胞の活性化といった利用が可能になります。SRTは、ピンポイントでRPEを破壊することが出来るレーザーです。従来のレーザー機器ではRPE破壊時に隣接する視細胞にまでダメージを与えてしまう可能性があります。SRTはRPEのみを破壊できるためにより低侵襲な治療が可能となります。

現在、加齢黄斑変性症や糖尿病網膜症といった網膜疾患には抗VEGF薬による治療や従来型レーザー機器による光凝固治療が選択されていますが、効果はあっても多額の医療費や眼内炎等のリスク、網膜の過凝固といった問題点があります。また、そもそも現在の治療ではどうしても回復困難な症例もあります。AutoPhoNやSRTといったレーザー機器はこれらの問題を解決する有力な選択肢となる可能性を秘めたものでありました。

訪問最終日には、三浦先生、安川准教授とともに、今後具体的にどのようなコラボレーションや研究が可能かのディスカッションをしましたがあっという間に数時間経過してしまう大変充実したものでした。以上の、プレゼンテーション、見学、ディスカッション以外には、RPEスフェロイド作製の実演やリューベック大学病院眼科の臨床現場の見学(臨床はほとんど日本と同じものという印象でした)を行いました。

また、日中の業務終了後は、三浦先生の家でディナーにお招きいただいたり、オペラを観たり、クリスマスフェスティバルに行ったりして、公私ともに大変充実した時間を過ごすことが出来ました。このような貴重な機会を与えてくださいました小椋教授、三浦先生、安川准教授、加藤講師、不在中の業務を変わっていただいた医局の先生方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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