研究テーマについて
当教室での取り組み
名古屋市立大学眼科学教室では、臨床研究、基礎研究ともさまざまな研究を行っています。研究のターゲットは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などがあげられます。
基礎研究は、実験室にこもり臨床とかけ離れたことをする、というイメージがあるかもしれませんが、私達のモットーは、つねに臨床で感じた疑問、患者さんの思いを忘れず、臨床にフィードバックさせることのできる基礎研究を心がけることです。忙しい臨床の合間を縫って行う基礎研究は、体力もいることも多々ありますが、新たな実験系を確立させてみんなで喜んだり、実験の結果を見て一喜一憂したり、悩んだりなど、臨床だけでは得られない経験も沢山得られます。当教室ではできるだけ多くの若い先生達に研究に取り組んでもらうことを推奨しています。臨床研究はスタッフ一同がさまざまなテーマに向かい合っています。臨床研究は普段の日常診療の中、エビデンスに基づいた標準的な治療の成績を統計的に評価し、医療の質の向上を心がけるとともに、基礎研究で得られた結果や海外の報告などを吟味して新しい地領を試みたりしています。また最新の検査機器や治療機器を用いて診断および治療レベルの向上を目指して常に情熱を持って臨床に取り組んでいます。
研究テーマのご紹介
家兎リポフスチン蓄積モデルによる加齢黄斑変性の病態解明
安川教授がドイツのライプチヒ大学留学中に開発した家兎リポフスチン蓄積モデルを用いて実験を行っています。リポフスチンは加齢とともにRPE細胞内に蓄積してくる顆粒状物質で、視細胞の光傷害を防ぐためRPEが視細胞外節を定常的に貪食処理している過程で生じる加齢性の副産物です。この加齢変化の蓄積が後に加齢黄斑変性発症に関与してくると考えられます。本モデルは、最終糖化産物(AGE: advanced glycation end products)からなるリポフスチン模擬微粒子を家兎の網膜下に注入し、RPE内へのリポフスチン蓄積を模倣させたもので、ドルーゼンや脈絡膜新生血管を発生することができます。また、加齢黄斑変性の前駆所見として注目されている異常眼底自発蛍光も人間の目と同様に観察できます。このモデルを利用し、アミロイドβ、アポE、補体H因子など主要な蛋白質の局在を免疫組織学的に検討し、AMDの病態に迫るべく研究を進めています。
レーザー脈絡膜新生血管モデルを用いた加齢黄斑変性の病態解明と新たな治療ターゲットの発見
加齢黄斑変性は、わが国でも患者数が増加しており、成人の視覚障害の原因疾患の上位になってきています。現在、血管内皮増殖因子(VEGF)をターゲットにした治療法が主流で一定の効果は得られていますが、効果不良例や再発例も多くみられます。我々は、マウスにレーザーを過剰な出力で照射して脈絡膜新生血管を誘導するモデルを用いて、加齢黄斑変性の病態解明と新たな治療ターゲットの発見を目標に研究しています。現在、VEGFを介さない経路による治療について主に研究を行っています。
PBS
tPA 4 IU
tPA 40 IU
網膜硝子体疾患に対するドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発
目はコラーゲンの壁やRPEなどのバリア機能の存在で、点眼薬や内服薬が眼内に到達しにくい特殊な構造をしています。そのため、網膜、脈絡膜に対する治療は抗VEGF役をはじめとした薬剤の直接硝子体内注射が主流となっています。さらには薬効維持のためには1か月ごとに投与を繰り返す必要があります。しかし、眼内注射は網膜剥離や白内障のほか、重篤な眼内炎などの合併症の危険が低頻度であるものの懸念される治療です。この問題を克服するために、眼科領域のDDSの開発に関する研究をおこなっています。これにより一回投与の作用期間を延長できる新規交代製剤の開発のほか、再生医療への応用、サイトカインの新規徐放製剤の開発を目指しています。
レーザー誘発網膜静脈閉塞症モデルを用いた網膜静脈閉塞症の病態解明
網膜静脈閉塞症(RVO)は黄斑浮腫が視力低下の主因です。黄斑浮腫に対する血管内皮増殖因子阻害薬の硝子体内注射は一定の効果がありますが、無効・再発例があります。頻回の通院と頻回の注射のため、医療費の高騰、患者負担の増大は社会的な問題です。また、黄斑浮腫が消退しても黄斑部の虚血のために視力改善不良例も散見されます。現在のRVOにおける黄斑浮腫に対する治療は、血管透過性亢進を抑制する対症療法に過ぎず、RVOの網膜循環障害をよく理解し、それを改善する根本治療が理想です。我々は、マウスを用いたレーザー誘発RVOモデル作成し、RVOの病態解明と治療への応用を目標に実験を行っています。
光傷害モデルを用いた新たな神経保護治療法の発見
わが国における成人の視覚障害の原因は、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性の他に、緑内障、網膜色素変性などが挙げられます。こられの疾患はどれも、最終的には光などの情報を受け取る網膜の神経組織に不可逆的な障害がおきることが知られています。我々は、過剰な光を照射することによる光傷害モデルで、新たな神経保護治療法の発見について研究を行っています。アクリジンオレンジを用いて白血球を生体内で可視化する方法や、光干渉断層計(OCT)を用いて網膜断層像を生体で確認するなど、in vivoでの手法に重点を置きながら、実験しています。
ZO-1
Actin
DAPI