Research

研究活動

視覚科学ラボ研究室だより

2023年6月23日

新しい職場での生活と学会発表を終えて

担当 安藤 諒太 (東部医療センター)

名古屋市立大学医学部附属東部医療センターでシニアレジデントとして勤務している、安藤諒太です。今回医局だよりを担当致します。

私は昨年4月に名古屋市立大学眼科に入局し、1年間名古屋市立大学病院で勤務し、この4月から東部医療センターに異動となりました。異動早々、4月に東京国際フォーラムで開催された第127回日本眼科学会総会で、学術展示で発表させていただきました。「糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニド硝子体内注射の治療成績」についての発表でしたが、学会会期中にマキュエイド出荷停止の話題がでた直後であったためもあり、沢山質問をいただくことができました。今回の学術展示での発表は、ポスターを貼って、その前で発表する形式ではなく、一般講演のようにスライドを作成し、短い時間とはいえ、講演し質疑応答が行われる形式でした。学術展示会場では、複数の講演ブースが横並びとなり、同時進行で様々な専門分野の発表が進められていました。昨年の眼循環学会での学術展示発表の際には、ポスター印刷で苦労しましたので、今回の学術展示発表スタイルは演者にとってはありがたく、また学会主催側も、ポスター展示のスペースが縮小できるので、お互い有益で画期的であると感じました。
ところで、昨年までは入院患者の診察が主でしたが、4月から自分の外来患者診察が始まり、毎日参考書を読み込んだり、わからないことがあったら、その都度、上司の先生方に相談させていただいたりする日々を過ごしています。東部医療センターでは、4月から眼科•レーザー治療センターが開設され、広角光干渉断層血管撮影ができるCanon OCT-S1が導入され、先日待望のナビゲーションレーザー(Navilas)も設置されました。また、手術に関しても、昨年までは手術の助手のみでしたが、東部医療センターでは、自分も白内障手術を執刀させていただく機会が増えてきました。毎回手術が終わった後には、指導医の先生が手術動画を見返して、改善点を指摘してくださるので、それを良く学び、患者さんのためにも、正確な技術を自分のものにできるように頑張りたいと思います。
最後になりますがこれからも日々研鑽を怠ることなく、立派な眼科医になれるように精進していきたいと思います。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

東部医療センターの医師、看護師、視覚技能士さんとともに (僕は前列右から2番目)

東部医療センターの医師、看護師、視覚技能士さんとともに (前列右から2番目が筆者)

学術展示の様子

学術展示の様子

2023年1月19日

第76回日本臨床眼科学会を終えて

担当 桑山 聡志 (臨床研究医)

2022年10月13日(木)から4日間にわたって行われた第76回日本臨床眼科学会(東京国際フォーラム・JPタワー)にて学会発表を致しましたので、ご報告させていただきます。未だコロナ禍のため現地開催、web開催(LIVE配信+オンデマンド配信)を組み合わせたハイブリッド開催でした。それにも関わらず、現地には日本の眼科界を代表する先生方をはじめ数多くの方が参加されていました。
私自身の発表は学会最終日である16日(日)のお昼でしたので、発表を目前に中々落ち着かない状態でシンポジウムや特別講演、インストラクションコースなどを受けつつ発表日を迎えました。発表内容は、“超広角眼底撮影装置の機種間での網膜前膜診断率の比較”というもので、当院の外来診療で使用している超広角走査型レーザー検眼鏡(Optos®California)と、2018年にZEISS社から発売された走査型超広角眼底撮影装置(CLARUS®)で撮影された画像を比較し、網膜前膜の診断においてどちらが優れているかを比較検討したものでした。結論としては、3色のLEDレーザー光を用いているCLARUS®が優れており、眼科の検査機器の発展は本当に目覚ましいものでありました。併設機器展示会場では、眼科に関連する多くの企業が検査機器を持ち込み宣伝しており、中には手軽に自己検査できる視野検査機器や、中間透光体混濁があっても視力の出る半導体レーザーを用いた眼鏡などの製品もありました。眼科学会と医療機器の発展により、「今の常識」が「未来の非常識」になるのはもはや時間の問題だと強く感じました。公演でも最先端の近視治療や宇宙と眼圧の関係など、普段自分では中々取り組みづらい領域も勉強ができ、非常に実りのある学会参加となりました。また本学会において、名古屋市立大学の眼科教授である安川力教授のシンポジウム「抗VEGF薬療法の限界・問題点と対策」がありましたが、私自身の公演と時間帯が被ってしまっていたので、教授の公演に参加することは出来ませんでした。しかし、幸運なことに今回の学会にはコロナ流行以前にはなかったオンデマンド配信があるので、学会から帰ったあとに公演を拝聴させて頂き、改めて安川教授のAMD・抗VEGF薬治療に関する造詣の深さに感動し、また通常診療にも直結する内容で非常に勉強になりました。学会をWeb開催するようになったのはコロナ禍以降ですが、このようなハイブリッド開催は現地開催とWeb開催の各々のメリットがあるため、コロナ禍が収束しても継続して欲しいと思います。
最後になりますが、このような貴重な発表の機会を与えてくださった安川教授をはじめ、忙しい業務の中発表のご指導賜りました平野先生、会場まで足を運んでくださった先生方、および医局の諸先生方にこの場をお借りして、心よりお礼申し上げます。

2018年5月9日

留学体験

担当 小椋俊太郎(留学中)

2017年5月からアメリカ東海岸、メリーランド州ボルチモア市にあるJohns Hopkins大学の Wilmer Eye Instituteに留学をしております。メリーランド州はワシントンD.C.の北側に位置しており、ボルチモアからD.C.までは車で1時間強、ニューヨークのマンハッタンまで3時間半程のロケーションで、週末などに日帰りで訪れるというのが一般的です。

留学先のLuttyラボではポスドクは現在私一人であり、培養細胞実験からラットの硝子体内や網膜下注射など私が主として全て熟しています。最近は委縮型黄斑変性における脈絡膜の肥満細胞の関与をメインテーマに研究を行っております。脈絡膜は網膜ほど研究対象となっておらず、非常に面白い分野であると感じています。今年のARVOでは動物モデルの肥満細胞における薬剤効果を検討した発表を行いました。これまでよい治療方法のなかった委縮型加齢黄斑変性に対し、新規治療法の開発することを目標に研究に取り組んでおります。またARVO中に医局の先生方にお会いできとても有意義の一時を過ごささせて頂きました。改めて感謝申し上げます。まだ日本を離れてたったの一年ですが、すでに浦島太郎になった気分でした。笑

ラボのあるWilmer Eye Instituteは6階建ての建物全てが眼科研究室で構成されており、角膜を扱う研究室からナノパーティクルをテーマとした研究室まで分野は多岐に渡り、幅広く研究しています。実験用の手術台やZeiss手術顕微鏡、動物施設が眼科専用にあるなど設備が整っている反面、共焦点顕微鏡などの機器類は共用で、予約が数週間先まで埋まっており、大学院の植村研でいつでも使用できた環境がいかに恵まれていたかを最近痛感しています。

Johns Hopkins大学医学部は全米屈指の名門校として広く知られている反面、ボルチモアは全米屈指の治安の悪さでも有名で、渡米前にウェブで検索をしても街全体がハザード地域に指定されており非常に心配していました。実際には、これまでに特に危険には遭遇しておりません!が、夕方薄暗くなってからのバスと地下鉄の乗り継ぎはやはり身構えてしまいます(とはいうものの、これは全米どこでも同じだとは思いますが…)また大学内の連絡メールでキャンパス周囲の発砲、強盗事件のアラートなども時々流れてきます。新入職者向けのオリエンテーションで銃所持者に遭遇した場合などの対処法の必須受講講座があったことには驚きました。一方で、ショッピングモールなどで少し子供から目を離しただけで店員さんや周りの方に注意されるなど誘拐などの犯罪を地域全体で防止するように徹底されています。気が緩んだ時こそ何かが起こるかも知れないと日々気を引き締めてるようにして生活してはいます。

住居はキャンパスのあるダウンタウンではなく、留学生家族が多く住む郊外のアパートメンツを選びました。僕が住んでいるアパートメンツは現在7組の日本人研究者の家族が入居しており、時々バーベキューなどを行って情報共有をしています。妻は現地人の友人もでき、娘たちを連れて一緒に地域の行事などに参加したりして楽しんでいるようです。長女は最近は家でも英語も話すようになって、子供達の順応の高さに驚いています。

渡米後1年を経てアメリカでの文化の違いにも家族共々慣れ、研究にも打ち込めるようになってきました。何とかよい結果を残せるように頑張っていきたいです。留学の機会を下さった小椋教授始め、医局の先生方に深く御礼申し上げます。

 

2018年4月3日

学位審査を終えて

担当 富安胤太(大学院生)

平野先生のご指導のもと、臨床研究と基礎研究の両方に4年間取り組んできました。
臨床研究では、網膜静脈閉塞症(RVO)の病態解明を行いました。その成果として、『Microaneurysms cause refractory macular edema in branch retinal vein occlusion.』が2016年にScientific Reportsに掲載されました。この論文は網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)による視力低下の危険因子について検索し、黄斑浮腫の再発・遷延の原因に毛細血管瘤形成が大きく関与していることを示し、早期VEGF阻害療法の必要性や、改善を認めない場合の毛細血管瘤への直接凝固を行うことで、不必要な治療を軽減できるのではないかと考えられるという内容の論文です。この論文で学位を取得させていただきました。また、『Characteristics of Polypoidal Choroidal Vasculopathy Evaluated by Optical Coherence Tomography Angiography』が野崎先生のご指導のもと2016年にInvestigative ophthalmology and visual scienceに掲載されました。この論文はポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の血管病変評価を光干渉断層血管撮影光干渉(OCTA)を用いて評価し、PCVの病態解明に有用であることが示した内容です。また、2015年9月に韓国・ソウルで行われましたKyungee Retinal Imaging Symposium (KRIS)、2016年12月タイ・バンコクで行われましたAsia-Pacific Vitreo-retina Society(APVRS)や2016年5月にアメリカ・シアトルで行われました、The Association f or Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)、他にも多くの国内・国外での学会発表を行う機会を与えていただき、その場を通じて、研究領域の最新の研究成果を知れたことは非常に貴重で、研究へのモチベーションにもつながりました。また発表だけではなく、平野先生、小椋教授をはじめ、ご指導していただきました先生方のご指導の賜物です。誠にありがとうございます。

基礎研究では、実験的脈絡膜新生血管モデル、光傷害モデル、網膜静脈閉塞症モデルなどをマウスで作成し、それらの分子メカニズムの解明と新規治療法の開発を目指しています。研究では失敗の連続ですが、プロセスに誤りがないか、想定に間違いがないかなどをグループで検証し、前進しています。実験研究助手の方々の力強いサポートをもとに、グループ一丸となって力を注いでいる現状です。

 

 

2017年11月1日

Euretinaに参加して

2017年9月7日-10日にスペイン、バルセロナにて開催された17th Euretina Congressに参加させて頂きました。フォークト-小柳-原田病における広角ICGAを用いた脈絡膜血管密度の測定という演題で、e-Poster形式での発表をさせて頂きました。

初めての海外学会への参加ということと、以前訪れたことがあり大変良い思い出のあるバルセロナということで、大きな期待をもっての学会参加となりました。ePoster形式のため学会会場でのプレゼンテーション、英語で他国の医師・研究者とディスカッションする機会はありませんでしたが、様々な講演を聴いたり、他の発表者のePosterを閲覧したりする中で改めて、海外学会や論文で研究成果を発信する重要性を感じました。また、同期の野崎祐加先生はオーラルでの発表をしっかりとこなしており、次は自分が、という気持ちも強くなりました。

バルセロナは痛ましいテロがあった直後であったので不安もありましたが、街は7年前に訪れた時のように陽気な雰囲気でした。ご一緒させて頂いた先生方のご好意のお陰で、毎日のように沢山の観光地巡りと美味しい食事を楽しむことができました。特に大好きなパエリアは毎日しっかり食べ、日本に戻ってきてからの食生活にも影響を与えています。これまでは遅々としてその建造がなかなか進んでいなかったサクラダファミリアは7年前とは様変わりして内装はさらに壮麗になり、時の流れと、スペイン人の底力を見たような気がします。是非とも生きている内に完成させて頂いて、その際はもう一度訪れたいと思います。

最後になりましたが、小椋教授をはじめ、たくさんの先生方にお世話になりこのような貴重な経験をさせて頂けましたこと、改めて厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。今回の経験を活かして今後さらに成長できるよう精進させて頂きます。

 

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