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視覚科学ラボ研究室だより

視覚科学ラボ研究室だより

2025年度

2025年10月6日

『25th Euretina Congress Paris 2025』

シニアレジデント 早見 拓真(R4)

この度、2025年9月4日~2025年9月7日にフランス・パリで開催された25th Euretina Congressに参加する機会を与えていただいたため、ご報告いたします。
Euretinaは、毎年ヨーロッパの各地で開かれる世界規模の網膜学会の一つです。会場には世界中から眼科医・研究者が集まり、最新の知見や治療法についての議論を直接聞くことができる貴重な場でした。初めての海外学会の参加でしたが、英語での発表や質疑のテンポの速さに圧倒されつつも、学問の最前線に触れることができました。会場では様々な分野の講演を聞いたり、機械展示をみたりと、有意義な時間を過ごしました。理解できない場面も多々ありましたが、大変充実した時間となりました。
私自身は、「増殖糖尿病網膜症に対する27ゲージ硝子体手術の治療成績と合併症の検討」についてポスターを提出しました。当院における2015年から2024年までの27ゲージ硝子体手術について統計をとり、25ゲージ手術のデータと比較しました。これも初めてとなる英語でのスライド作成であり、8枚以内とコンパクトな指定でしたが、英語の言い回しや表現について調べつつ、見やすいスライドを意識して作成しました。最後には平野先生にもご指導いただき、完成することができました。
また今回は、同期の山崎先生と河合先生もそれぞれポスターを提出していますが、山崎先生が安川教授指導の元に提出した題材が、本年度のEuretinaより新設された「e-Poster Theatre」に選出され、ポスターの内容について口頭発表を行いました。医局内でも予演会を通して練習を重ねており、本番はかなり緊張があったと想像しますが、無事発表を終えられていました。
学会場の展示ブースでは最新の手術機器や検査器械に触れることができました。印象的だったのはスマートフォンに装着する形で使用する無散瞳広角眼底カメラで、企業担当者が丁寧に説明してくれ、実際に操作体験させていただきました。
学会後には、凱旋門やエッフェル塔、ルーブル美術館などのパリの観光地や美術館を訪れ、学びと文化体験を両立する有意義な時間を過ごすことができました。学会という非日常の場だからこそ、学習・研究へのモチベーションを新たにする契機になったと感じています。
最後になりますが、このような機会を与えてくださった安川教授をはじめ、忙しい業務の中ご指導賜りました平野先生、および医局の諸先生方に対し、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 

2025年7月9日

名古屋市立大学眼科 2025年度近況報告

医局長 平野 佳男

名古屋市大眼科の2025年度近況報告です。

まずは人事ですが、2025年4月より佐藤達彦先生が福岡県より当教室に入局されました。佐藤先生は大阪大学卒で、網膜硝子体手術で有名な大阪労災病院の恵美和幸先生の下で研修された先生です。20年以上の経歴があり、白内障手術、網膜硝子体手術が専門で、当院でも早速手術部門の主要スタッフとして活躍中です。手術に関する物品管理、手術システムの改変などに精力的に取り組んでいただいております。吉田暉平先生が三重県より異動されました。吉田先生は外眼部手術を得意としており、当院でのこの分野の発展を期待しております。さらには後期研修3年目の先生が3名(1名は産休からの復帰、2名は新規入局:岐阜県と兵庫県より)、後期研修1年目の先生が6名新たに入局しました(うち1名退職)。それにより現在の教室員は20名となりました(写真は名古屋市立大学の桜山キャンパス内の桜の木の下で撮影)。昨年度は教室員が15人にまで減少したため、関連病院の先生方に応援に来ていただき、外来診療と硝子体内注射を担当していただきました(現在でも硝子体内注射の一部は手伝っていただいております)。ご協力いただいた先生方にはこの場を借りてお礼を申し上げます。

当院では再生医療の治験をおこなっております。『近視性網脈絡膜萎縮症におけるヒト(同種)皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞シート(PAL-222)移植試験の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験(治験)』です。PAL-222は、安川教授が開発された細胞自身が産生する細胞外マトリックス成分のみから構成されるブルッフ膜様構造を伴う細胞シート作成技術を基盤とし、ファーマバイオ社が細胞シート化技術を発展させ、ヒト(同種)皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞をシート化した再生医療等製品です。近視性網脈絡膜萎縮患者を対象にPAL-222を網膜下に移植し安全性と網膜保護効果を検証する試験で現在目標症例10例の手術が完了しました。データを解析中ですが、幸いシートに起因する有害事象の発生はなく、今後データをまとめて報告する予定です。第二弾として新生血管型加齢黄斑変性患者を対象としたPAL-222の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験もおこなっております。

また、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に伴う黄斑浮腫に対するファリシマブの臨床研究(研究代表:三重大 近藤教授)、糖尿病黄斑浮腫(DME)を対象とした経口血漿カリクレイン阻害剤のPhaseⅡ試験(国際共同試験)も現在募集中です。無治療のCRVOやDME(既治療眼でも条件次第では可)の患者さんがおりましたら、ご紹介いただけますと幸いです。

2025年4月より名古屋市総合リハビリセンター附属病院が『名古屋市立大学医学部附属リハビリテーション病院』となり、新たに名古屋市立大学医学部附属病院群に加わりました。こちらの病院は、高度なリハビリテーション医療を提供するとともにリハビリテーションにかかわる臨床研究を推進し、患者さんの健康増進に役立てることを目指しています。現在眼科は代務医師による診療ですが、将来的には常勤医師を派遣することを考えています。名古屋市立大学病院、東部医療センター、西部医療センター、みどり市民病院、みらい光生病院に、今回のリハビリテーション病院が加わり6つの病院からなる附属病院群が誕生しました。このことにより、急性期から回復期、慢性期まで幅広い医療を提供することが可能になりました。

また当院では、高齢化進展に伴う市内の救急搬送の増加、南海トラフ地震など災害発生時の災害医療活動、救急科専門医不足に対する人材育成に対応するため、『救急災害医療センター』の建設工事をおこなっており、2026年度に開棟を予定しています。さらなる機能拡充を図ることを目指しております。

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